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1.202025
愛と放射能の天秤 12 スモルニコワ先生3 性器の被ばく
原発事故が起こっても、実は、被ばくの被害というのは、まだよくわからないことが多い。
ヒロシマナガサキの被爆者でさえ、裁判をまだ行ってる。
チェルノブイリ原発事故の被害者は「チェルノブイリ法」で守られてるのに、日本の場合は、別の科学で、放置されています。
長年(笑)の経験から、「放射能なんて気にしなくていい」という人たちの根拠というのは、だいたいこんなふうに集約されます。
バカバカしいのですが、本当です。すぐにたばこで癌になるのと比べると~とか。
よく科学的エビデンスを出せ!とか、わかってないことを言うなと、激高してる人をたまにみかけますが、それは推進派にも言えることなんですよ。
とくに、原発事故が起こった時、まずしなければいけないヨウ素剤の配布をしなかった。大失敗しました。
これはチェルノブイリ(旧ソ連)でも、日本でも。
なぜなのか?
ほんとうのところ理由はわかりません。
うがったみかたは、データを取りたい、ということもあるでしょう。
あるいは、原子力の責任者がいいかげん。
あるいは、子どもたちにヨウ素剤を飲ませる行為そのものが人々の危機意識を高めてしまって、監視の目が厳しくなる。
どのあたりなんでしょうね?
で、ベラルーシではいまだに、事故のとき、子どもたちをメーデーのパレードに出して、平静を装った人を罰するべきだという意見もあるそうです。
それで、事故が起こった時に、日本で、必ず出てくるのは、「ほうれん草学派」です。
放射性ヨウ素を気にすることなどない。
毎日、〇ベクレルのほうれん草を〇グラム食べ続けても、被害はない、
というアレです。
チェルノブイリ事故のとき、日本の電力会社や、フクシマ事故のときも、みなさんもテレビでずいぶん耳にしたのではないでしょうか?
3.11の事故のあと、実は妊娠中のお母さんが貧血だからほうれん草を毎日食べるように言われて、食べたそうですよ。
毎日。
お子さんは、チェルノブイリハートに出てくるお子様の一つの症状を持って生まれてきて、手術をしなくてはならないというお話を聞きました。
どうでしょう?
ほうれん草を毎日食べても安全だ、というのはあくまで彼らの理論にもとづいた、計算にもとづく机上の空論です。
じっ
ヨウ素に汚染されたほうれん草を彼らの言うように毎日食べ続けて、まったく影響が出なかったなどというエビデンスはこの世に存在しません。
存在しないのに、ほうれん草学派は、存在するのです。
では、毎日、ほうれん草(汚染されたものが出回る地域といっておきますね)を食べて、お子さんが手術をしなければいけない症状を持ってるお母さんは、放射性ヨウ素と因果関係をつけて訴えることが可能でしょうか?
これも難しいですね。
被爆の被害など、このように、どちら側にも証明の機会を与えないからこそ、原発運転には賛成できません。
また、食べる側の個体差もあるのです。
同じ年齢、同じ親から生まれても、あるいは家族でも、諸条件はバラバラで同じものを食べていても、よほどの高線量でなければ、すぐに同じ症状がでるとは限らない。
たいていは時間がたってから出現するものです。
個々ばらばらの症状。
こんな毒物がばらまかれてる世界って、狂気だと思います。
さて、話をスモルニコワ先生が来日した3.11後の東京のこと。
そこは皇居近くで、ガイガーで計測したことろ、だいたい0.12μ Sv前後でした。
なかなかの高線量です。
ちょうど鎌仲ひとみ監督のインタビューを終えて、ホテルを出たら、目の前の広い公園でマラソン大会のようなイベントの準備をしていました。
そこでみな準備運動をしたり、柔軟体操したりしていました。
地べたにすわって、足を開脚して、身体を倒して、準備をしてる男性がいました。
スモルニコワさんは「あれは、危険ですね。性器が被ばくしますのですぐに辞めるように言ったらいいですよ。測定器を見せたらわかるでしょう」
え?え?
私が言いに行くの?
スモルニコワさんは、にこやかに笑って、うんうんとうなずいています。
今でも、スモルニコワさんと通訳の人が二人たってる地点から、私がずずず~っと遠く離れて小さくなってしまったような焦りを思い出します。
みずしらずの若い男性(30歳ぐらいだったでしょうか?)のかたに
「あの~すみません、ここ放射能で汚染されてて、地べたに座ってそんな体操してたら…あなたの性器が被ばくしますからやめたほうがいいです」
と言いました。
どうしてそんなこと言えたでしょう?
ツラの皮が厚いから?
やっぱりその人がかわいそうだからですよね。
スモルニコワさんは、きっとわかってもらえる…とニコニコしていますが、今思うとその男性が怒り出して殴られたかもしれないなとも思います。
けれど、そんなことより、その人を汚染された土壌で下半身、性器も脚も直接、死の灰付着させてしまうわけですから、言ってあげないと。
もし、自分だったら言ってもらいたい、教えてもらいたい。
被ばくを少しでも減らしたい。
それが、押し付けかもしれないですが、見ず知らずの同胞の人への愛です。
それは、彼につながる未来を守ることですよね。
実際に、ベラルーシでは子どもの子宮のトラブルの話もありましたので(どこかでお話できたらいいですが)
もちろん、それはボランティアよりも、国の責任ではあります。
しかし、その男性は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、
「そういうことは主催者に言ってくれないかな」
というまさかの、返答。
すぐに立ち上がるでもなく。
(あなたの性器が被ばくしてるんですが~と思いながら)
そして今度は、私は、主催者ブースとおぼしき場所にいって、責任者はいませんか?
と尋ねました。
会場にはあきらかにアルバイトスタッフしかおらず、「責任者?誰なんだろう?わかりません」
私は、この土壌が汚染されてるので、なるべく地べたに座らないように伝えてほしいというのがせいいっぱいでした。
どれほどの子どもたちが、汚染されたグランドで体育すわりさせられたんだろうな。
線量学派は、たぶん、根拠のない〇ミリシーベルト以下は安全ですよ、って言うと思います。
すべて彼らの空想にもとづいた計算です。
ヒロシマナガサキのときの被ばくに比べて、低線量なのて…。
しかし、スモルニコワさんたちが経験してきたこともまた否定しきれないと思います。
実際のところ、妊娠中の女性がレントゲンを受けた後、その子どもが白血病になる確率が高くなるとあとでわかってきてることもありました。
そのような研究を表に出す人は、勇気ある人です。
では、汚染された土壌にもろに性器を近づけて、座ってる人は、レントゲンより確かに線量が低いでしょう?
しかし、一回だけじゃなくてたびたびだったらどうか?
あるいは体調悪いときだったらどうか?
そういうセンシティブな守護感があってしかるべきじゃないでしょうか?
当時の東日本では、子どもだけではなく大人も守られてませんでした。
そのときは恥ずかしもありましたが、無駄に被ばくさせられる人々が心配でたまりませんでした。
若い人たち、生殖する年齢の人たちの被ばくについてもっとナーバスにされるべきでした。
それは
日本の未来をけずってることなんですよね。
(男の子は、性器の発達の異常もあるので、父親がサポートしなくてはいけないと思います。甲状腺との関連性もあるそうです)
スモルニコワ先生の、チェルノブイリ原発事故からの活動は、そんな毎日だったし、政治的圧力は日本とは比べ物にならないほどでした。
この写真は、ゴルバチョフ大統領に隠されていた汚染地図が事故から3年後に公開され、汚染地を中心に、救援を訴える活動が組織され、はじめてのデモのときの写真。
ハチマキは、少しでも街を歩いてる人に見てもらいたいので、考えてつくったと。
まだ、旧ソ連は崩壊しておらず、KGBビルの前を歩いたときは、ビルの上から射殺されるかもしれないと思ったそうです。
そうして、みながくっついて、腕を組み、ばらばらにされないようにして歩いたと。
(ちなみに、汚染地図はKGBが探しても手に入れられないほど厳重に、秘密にされていたといいます。それを大統領に見せない…という官僚の判断って、国家を牛耳ってますよね)
あとで、KGBからもらったデモの写真だそうです。
そういう活動をしてきた人たちから見たら、「あなたの性器が被ばくしてるからいますぐ、立ち上がれ」と射殺されない環境で言うことなど、なんの苦労もないことだと思えますよね。
(実際には血液の中のいくつかの指標を調べると、被ばくしてるという指標が出てきます。動物などではよくデータが出てきます。ほうれん草学派は自分たちで毎日ほうれん草をたべて血液検査して出したらいいのです)