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1.162025
愛と放射能の天秤 10 スモルニコワ先生1
また、日本で事故が起こったら…と思うと、伝えておかないといけないいろんなことがたくさんあり、1992年から救援活動を始めたさまざまな体験が、一つ一つ、ジグソーパズルのピースだったのか?
さまざまな科学者や、日本のヒロシマの医師。あるいは、子どもたちの救援活動の体育教師、ウラジミール先生のお話の中のヒロシマの医師も…。
彼の後ろにあるIAEAと科学者の闘い。
ただ、子どもたちを保養に受け入れるだけなのに、なぜこんなに反対を受けて、ベラルーシ政府からも厳しい監視をうけないといけないのか?
その関係性が、一つにまとまってみえてきたのは、ロシアとウクライナの戦争なのかもしれません。
話はあっちいったりこっちいったりですが、3.11のフクシマ原発事故のあと、スモルニコワさん(汚染地域の女医さん)からのメッセージをご紹介します。
外国人に被ばくのデータを公開してはいけない…というベラルーシ政府の意向もあったのですが、書けることを書いてくれました。
写真のいちばん、右端の女性です。
スモルニコワ先生は、チェルノブイリ原発事故直後から、ゴメリ州の汚染地帯に住んでいたので、そのまま子どもたちの検診や、救援活動にたずさわってきました。
スモルニコワ先生からのメール
放出された放射性物質の種類かわかりませんが、(重金属汚染も考えられる)、
放射能危険度は、γ線量だけではなく、放射性物質の種類、半減期などで決まります。
したがって、 政府は医療、経済的リスクを考慮して基準値、放射線防護対策を実施すべきだと思います。
主な目的とは、技術、管理、および経済的な対策によって被曝量を減らすことです。
ベラルーシの状況をそのまま福島に当てはめることもむずかしいかもしれません。
1.飲食による内部被ばくのしくみ
口、鼻、目、皮膚は早くも放射性物質に接することによって、障害を起こしやすいです。
チェルノブイリ直後はヨウ素131、ストロンシウム90による障害は目立ちました。
皮膚がん、肺がん、目の病気が増加しました。
放射性ヨウ素は甲状腺にたまりやすく、5-6年が経って甲状腺の病気(腺腫、結節性甲状腺腫、甲状腺がん)が急増しました。
セシウム、ストロンシウムの物質は口内に入って、舌、食道、胃、腸のがんをおこし、腸によって血液の中に吸収され、全身を巡り、心臓、腎臓、肝臓に蓄積されます。
放射性物質が1秒ごとに放射性崩壊する事で 、体内に異常が発生します。
たとえば、腎臓の腎尿細管の細胞の表皮のダメージ(腎実質)は水ぶくれ、嚢胞、水腎症を起こします。
脳、肝臓、甲状腺にも同様のプロセスが発生します。自己免疫性プロセス、腫瘍が起こりやすくなります。
骨髄、リンパ系、血液形成への影響が深刻で、免疫が低下し 、血液疾患が発生します。
ベラルーシの汚染地に実際にあったケースです。
2)内部被ばくの影響について
自然γ線の中で生きてきた人体にとって人工の放射能は不自然で、危険です。
「放射能を浴びても健康に影響がない」と主張している日本政府の皆さんの教師が悪かったか、学校での成績がよくなかったと思えます。
ソ連にもイリイン博士のような放射能は影響がないと主張していた学者がいました。
私が教わってきた人と言えば、イリイン博士およびソ連の指導者のような人物がおり、ネステレンコ教授、ニキテンコ教授、ボンダジェフスキ教授のような学者もいました。
後者の学者たちは放射能の恐ろしさを証明していたため、政府に嫌われていましたが、私の経験を振り返ってみれば、後者の方が正しかったことがわかります。
また、菅谷 昭さんというすばらしい日本人の先生を知っています。
その先生は1991年ベラルーシの汚染地を訪問し、チェルノブイリ事故の影響はIAEAおよびソ連の報告よりずっと深刻だったことを指摘しました。
以上、事故が起こってすぐ、スモルニコワ先生が、心配して送ってくださったメールでした。
悲しいながらも、笑ってしまったのは、【「放射能を浴びても健康に影響がない」と主張している日本政府の皆さんの教師が悪かったか、学校での成績がよくなかったと思えます。】
という部分ですね。そうとしかいえないよなぁ。
イリイン…という名前も出てきていますが、このかたは科学アカデミーのなかでもかなりの重鎮で、移住などさせなくていいとして、チェルノブイリ法をつくった科学者たちと対立していました。
今でも思い出されます。
3.11の事故のあと、スモルニコワ先生が日本に来て、お話会などしてくださり、鎌仲ひとみ監督の映画のインタビューを受けることになりました。
そして、そこで、チェルノブイリの汚染地の医師として、内部被ばくの危険性を証言してくださったのです。
私たちがいちばん知りたいナマの情報でしたが、「あっ」と気づいて、「スモルニコワ先生、先生が日本で話したことがベラルーシ政府に知れたら大変なことになるんじゃない?」と真っ青になったのです。
事故による健康被害を口外したこと、そのような活動は反政府活動とみなされます。国内での動揺を引き起こそうとしてるのか?的な。
一瞬、スモルニコワ先生の顔が引き締まりました。
「もう、(日本のこの状況では)、どうなってもしかたない」
その言葉を聞いたとき、ベラルーシの政府状況を考えると、とても心配になりました。
ベラルーシの子どもたちのために、スモルニコワ先生自身が犠牲になることは、覚悟の上だと思います。
しかし、日本の原発事故、日本の子どものためにまで、先生が命をかける必要があるでしょうか?
それでも、私は、鎌仲ひとみさんに、スモルニコワ先生のために、やはりインタビュー映像はなかったことにしてください、と言えませんでした。
もし、スモルニコワ先生の命が危険にさらされるのであるなら、自分の命をかわりにとってください、と言いに行くしかない…。
チェルノブイリの科学者たちも、救援団体も、みなそのような圧力を超えて、活動しています!と通信で書いて募金を訴えてきたこと。
わかったつもりになってた。
でも、本当に、発言の一つひとつで、命がかかってる緊張感は、もっともっと重いものでした。
日本のために、スモルニコワ先生の命を危険にさらしてる、という申し訳なさと罪深さ。
でも、なぜ、放射能が危険だと言うと、命が危険になるのでしょうか?